夏草の記憶(トマス・H.クック)

夏草の記憶 (文春文庫)

夏草の記憶 (文春文庫)

表紙が好き。


あらすじだけとると、そこらへんに転がってそうな話。
もう、本当にどこにでもありそうな話。それをここまで長編に出来る、そして最後まで読ませるのは凄い。凄いけど……。
しかし、あまりにもそこら辺に転がりすぎでしょ、これ!
それが魅力的ならいいんだけど……。


ケリーだって、全然特殊な女の子には見えなかった。主人公もそうね。
主人公は最後の最後まで好きになれなかったなあ。こういうタイプに人殺しなんてできっこないよね。やり方がセコすぎる。
私はこういうタイプは苦手。まあ、若い時はこんな風に自意識過剰になるとはいえ、自分の気持ちばっかり考えて、全然相手の事をきちんと見ようとしてないんだもんなあ……。
それが若い時だけならともかく、立派な大人になった今現在でもそうなんだもの。


だいたい無実の罪を着せられた、ライルが可哀相すぎるのですが。
主人公は、ぐじぐじつまらないセンチメンタリズムひたっている暇があったら事実をきちんと伝えていれば、ライルの冤罪はまぬがれたのに。
言いたくないのは分かるけど、そういう状況では無いだろうに・・。
というか、どうして真犯人を最後まで考えつかなかったんだろう??
自分のウソ(ほのめかし)がトッドに伝わるだろうと確信していたのなら、自動的に真犯人だって思いつくのでは。


結局、ベンはライルがやったと思っていたわけだよね。 自分の嘘がライルに伝わったので、ライルがケリーを殺したと思い込んだ…。
トッドに伝わるだろうと確信していたわりには、どうしてここだけ論理的じゃない思い込みが出てくるのだろうか。
そういう事に気がつかない人には見えないけれど。
あと何故ケリーがあんな事になった時、ベンは驚かなかったのだろう。それも分からない。


エディは、無邪気なフリしてますが、かなりあやしいよねー。だって、ベンの言った嘘をトッドに伝えたのなら、いくらエディだって自動的に犯人が分かる筈。
でもトッドの事を証言をしている様子はない。
結局一番のくわせものは、エディって事かな(出世してるし)。そのエディを表面的な人物としてしか認識していないベンの人物観察力は、いまいちあてにならないなあ。。


クックが日本で人気があるのは、分かる気がします。「湿度が高い」しね。そういう所が日本っぽい。文章は読みやすかったです。
あとは構成の勝利かな。

"彼女は、ロッカーにもたれかかった。一列に並んだロッカーをまとめて悩殺しようとでもいうのか、やけになまめかしい仕草だった"p147

という一文が好きです。