吾子の肖像

ええっと、これは児島守生のプロフィールが出てきた時点で、ネタが分かってしまいました。少し分かりやすく書きすぎてあるかな?  それでも物語として面白かったので、飽きずに最後まで読めた。
どことなく不気味な主人公の母とか、操が実は主人公の××だったことなどが物語に色彩りを添えてるけど、それが本編の謎となんら関係ないのが惜しいと思った。と言っても関係はあるんだよね、そう、今書いていて気がついたけど関係はあるではないか。なのになんでそう感じてしまったのだろう? 書き方の問題? 少し筋がバラバラに思える。
ともあれなかなか面白く、私好みでした。今邑さんの他の小説ってあまり読んで無いんだよね。読んでみようかな。

町かどの穴(R・A・ラファティ)

町角に出来た穴のせいで、町は異次元からきた人たちにどんどん取って変わられ、しかも何故か気づいたり気づかなかったりてんやわんやで、まあ大変。
ってな話。いわゆるスラップスティックコメディ。
面白かった! 今まで読んだラファティさんの中では一番面白かったよ。最高。
この不条理さ、わけのわからなさ、でも教養はある感じ。いいなあ。。
そして独特な文体は、なかなかまねはできないと思う。
ラファティみたいなホラ話を作る人が親戚の叔父さんにいたら楽しいだろうなあ。いつも一緒にいる家族だとちょっと近すぎる感じ。

密室ロジック

密室ロジック (講談社ノベルス)

密室ロジック (講談社ノベルス)

殺される前も後も室内には被害者ひとりきり。左右の廊下には複数の人間が、非常口の前には監視カメラが出入をずっと見張っている。こうして密室状況は作りだされた。一見平凡な殺人事件は、論理的に不可能犯罪へと飛躍したのだ!最終章に登場する“彼”の研ぎ澄まされた論理が眩く光り輝く純粋本格ミステリ

私は、氷川さんの理屈っぽい所は好きだけど、これはちょっとなんじゃろー。むう。
最後の詰めの謎解き部分が理屈っぽい点は好きなんだけど、だからこそ日常のシーンをもう少し自然にというか、スムーズに書いて欲しいかった。おそらくはこれが氷川さんにとっての自然なんだろうと思うものの。
最後に動機が全く示されてないのは、それはまあ論理的の妙を楽しむ推理小説なので別にいいんだけど、それだったら、あんなにまどろっこしかった前半部分はなんのためにあったのだろう、と問うてみたい。
終わりがああなら、前半部分ももっと簡潔にして、短編にでもすればスマートな作品になるのに…。ようはバランスがとれてないなあと思いました。
それでも読んでる最中は面白かったんだけどね。わはは、すごい理屈っぽい女の人だなあ、とか。(小説内)氷川とか男の人でこの一人称ならまあなんとなく分からないでもないけど女の人だと、違和感がありました。
もちろんそう思うのはある種のすり込みであり、こういう女の人も世の中にはいるのさ、きっと、と思いながら読んだけど……。


よく言われる氷川さんの文章についてだけど、私はとりたてて気にならなかった。読みやすい漢字ばかりだしね。
う〜ん、もしかしたら、文章の読み辛さを感じるポイントは、人によって


1文法(文章)がねじれている
2無意味に難しい漢字や単語を使う


――このどっちに反応するかに分かれるのかなあ。(勿論、どっちも気になる人、気にしない人、はいるだろうけど)
私はどちらかというと2に反応しやすく、2の場合は「読みにくい」と感じる事が多い。氷川さんの場合、文法はややねじれていて分かり辛いものの、使っている漢字や単語は平易で分かりやすいものなので、それほど読みにくいと感じないようです。

死は生なればなり(クライヴ・バーカー)

そう、バーカーの作品のラストは、ことっっっごとくっ、私に合わないものばかりなのだった。忘れていたよ。そして、本書もまたしても合わなかった…。ファンの人はパーカーの書くラストもみんな気に入ってるのかな。そりゃそうなんだろう。私が不満に思ったのは、なんで幽体離脱しちゃうのだろう? という所。 そうやって今まで進めてきた物語とは”次元の違う”ことが、最後にさらっと出てくると、駄目なんだよねえ。気持ちがすっきりと納得出来なくて、どうしてこういうラストにするのかとガッカリしてしまった。そこまではとても面白かったのに! でもこれは私が元々はミステリ読み(と言っていいのか……)だからそう感じるのであって、「ホラー」というジャンルからすれば当たり前であり、むしろそういう枠に捕われない部分が面白いのかもしれない。


とか書きつつも、本音を言えばホラーだからと言って、伏線も何もなしにやられちゃったら困るよ、なのであった。うーん、もしかしたら何か読み落としたのかもしれない。
どうやら自分は小説を読む時に、物語の中にはその物語内の”次元”があり、それを意味もなく飛び越えてもらっては困る、と感じるよう。そういうのは反則だよーってね。
うん、そこにいくまでは相変わらずの発想の豊さで面白かったです。
もしも私だったら、どういうラストにしただろうか、なんてそんな事を考えてみるのも楽しいかもしれない。

蛍 (GENTOSHA NOVELS―幻冬舎推理叢書)

蛍 (GENTOSHA NOVELS―幻冬舎推理叢書)

麻耶さんの小説には雨がよく似合う。
まず最初から主人公の立場がずっと気になっていた。こんな明らさまな前振りがある以上犯人だったらはストレートすぎるし、と思わせるのを引っかけにして主人公が犯人なのだろうか??? いやいや本事件とは何の関係ない前振りだったりして。しかし確かに主人公の存在感の無さは気になるけれども、こういうタイプは意外とモテるのでは、うんぬん。


で、ここからはネタバレありで書いてしまいます。
主人公の一人称の書き方がおかしいのが、ずっと気にかかっていました。
主人公が会話している時だけ、地の文に「諫早」という主人公を指す名字が出てくる。だけど主人公が誰とも会話をしないで、一人でモノローグしている時には、不自然なほどに主人公の名字(や名前)を指す単語が出てこない。
ということは叙述トリックなのかな……。
――よし、分かった、会話をしている時に「諫早」と指名される人物と、モノローグでの人物とは別人なんだ! きっとモノローグは平戸のもので、平戸が犯人じゃないかな?
と思っていたら、あああ違ったー。
ある意味近いといえば近かったから少し満足だけど、やはり残念。


最後に明らかになる雨だれの仕掛けが、本書の雰囲気によくあっていて、恐くて良かった。

雪に閉ざされた村(ビル・プロンジーニ)

雪に閉ざされた村 (扶桑社ミステリー)

雪に閉ざされた村 (扶桑社ミステリー)

クリスマス気分が盛りあがる山間の村に雪崩が発生し、村は外界から孤立した。折悪しく、村はずれには秘密裏に3人の犯罪者が忍びこんでいた。そのリーダーは、住民全員を抹殺する、おそるべき計画を練りはじめた……。

まずは何と言っても題名萌えな作品。クローズド・サークルの中でも、”雪の山荘物”が好きな私が飛びつかないわけがない。内容は、”起承転結好き”でもある私にとっては、外せない一品、て感じでした。

登場人物の配置からストーリーの盛り上がり方まで、まるで教科書のようだった。見本のようです。
ヒロイン役のレベッカが、もうちょっと活躍してくれるのでと期待してたんだけど、そうでもなかったのが少し残念でした。
全体的にはミステリよりはサスペンスに近いです。
この手の作品に私が一番求めるのはハラハラドキドキアドレナリンなのですが、その点この作品はいまいちでした。その分緻密な描写が光ってました。

村人が聖歌を歌うところは、2度目は村人全員が意図を知って歌ってるという設定ならいいのになあと思った。でもこういう場面好きです。


ちなみに作者のビル・プロンジーニは、あの「名無しのオプ」シリーズの作者でもあります。

ホームズ、最後の事件ふたたび(ロバート・J・ソウヤー)

ロバート・J・ソウヤーは、ほんと面白いなあ。とにかくインパクトがあるんだよね。一回読むとなかなか忘れないんだ。
題材の選び方にくわえて、語り口だけでも面白いので記憶に残りやすいという面があります。


小説として見ると、こういうSFっぽい論理展開は好きです。そんな強引な……と思わなくもないけど、もともとそういうアンソロジーのために書かれたと思えば納得もする。
それにしても「シュレディンガーの猫」って、色々想像をかきたてられる命題だね。最初にこの「シュレディンガーの猫」という単語を見た時に、意味は分からないながらもとても魅かれるものを感じた事を思い出しました。


しかし、この小説は確かにかなり面白かったけれど、SFの10年の間に10指あまりにはいる傑作かどうかと聞かれたら、私はうーん、と首をひねるぞ。(「90年代SF傑作選 下」に収録されていました。) SFの面白さというのはこの作品はちょっとズレてない? といった作品がこの「90年代SF傑作選」には多かったんだけど、それは私の好みとたまたまズレていたのか、それとも私がSFというものをまだ理解していないのか何なのか、うーむ。