時尼に関する覚え書

うわ、何の気なしに名作を読んでしまった。時間テーマのSFの中ではかなりの名作。絶対外せない一品だ……。
少年は過去から未来へ、少女は未来から過去へと連続して生き続ける。お互いの青年期に逆の時間を進みながらも共に過ごし、そして別れの時が来る。あとは自分は年老いていきながら、互いに若がえっていく相手の「足長おじさん」をする事になり、やがて輪が閉じられる。その二人の輪をつなぐ指輪。
切ない……。あぁ、小説を読む醍醐味だ。じんときました。


本短編の新鮮だったところは、時間軸が正反対なために同じ思い出を同じ時間に共有する事が出来ないんだよね。自分にその記憶が無い時は相手に記憶があって、自分に記憶がある時には相手はまだ知らない。その設定が切なくていい。
また青年期だけではなく、お互いの一生が書かれてあるので、スケールの大きさとある種の崇高さを感じました。SFだなあ。多くの人におすすめです。
S‐Fマガジン・セレクション〈1990〉 (ハヤカワ文庫JA)」か、「美亜へ贈る真珠―梶尾真治短篇傑作選 ロマンチック篇 (ハヤカワ文庫JA)」で読めます。