「殺意の集う夜」の主人公の謎

殺意の集う夜 (講談社文庫)

殺意の集う夜 (講談社文庫)


ええと、まずは主人公の謎について、あげてみます。


・主人公は初見の三諸がパッとみただけで”若い男”と認識するくらい、姿、顔ともに普通の男らしい。
・なのに他の人の前でも「あたし」という一人称を使っている。さらに”マリ”と園子に呼ばれている。
・しかしそれをおかしいな、と気にしたそぶりをした人は別荘には誰もいなかった。
・なろうことか、妻がいる八重原がいきなり誘ってきている。ウホッ!の世界じゃないんだから、男が男を誘う時は、普通なんらかの前置きは無いものか。
・まあ八重原がバイだったとしたら分からなくも無いが……。ゲイ同士で分かり合えるという事もあるのか(?)……小説だしね……と納得しようとしたら……


・なんとマリはフレアスカートをはいていたらしい。わあ女装してたんだ?
・あ、そうか、女装してたという事は、八重原(その他)は、地声が低い女として勘違いしてたのか。マリは三諸が見た時とは違って、お化粧で化けて別荘に行ってたんだね。
・と思ったら、最後の最後、三諸と車で正面衝突するさいに、”若い男”としっかり三諸は認識している。”女装した男”などの記述は何もない。


・という事は……マリは、顔は男のまま、服装は女(フレアスカート)で、一人称は”あたし”だったのかーー。
・お前が一番怪しいっちゅーねん!


――以上、主人公についての謎でした。


あと他におかしいと思ったのは、園子が運転を変わらなかったというけど、園子は指紋はどうするつもりだったのだろう?
マリが運転してきたと見せかけるつもりなのに。

 
ついでに、プレゼントにつけるメッセージを、私の代わりに書いてと園子に言われて、ハイハイ言う事をきいちゃうマリも変。
”人間写植機として有名”かつ、送る相手が”大学の先生”なら、マリの字はバレてるだろうに。。。事態はややこしくなるぞー。


なんて細かい事を言いつつも、この本を読むのは3回目くらいで、結構好きな小説なのです。


この本は二つのパート共に、”殺人犯が事件を捜査する”になっている。
マリのパートと前書きは、引っ掛けになってるわけで。
語り手が犯人なのはちょっと卑怯だよなあと、叙述トリックの時はいつも思います。
最後の最後まで自分の殺人について振り返らないのは不自然すぎる、とか。
ま、それがお約束だし、そういう所に突っ込みを入れるのはヤボと分かっていても、不自然さを感じるのでした。


ミステリとしては、多くの趣向や伏線がある。
で、けっこう面白い。だから何度も読み返してる。だけど今いちスマートじゃないなあと思うのは、やはりこの叙述トリックに少し無理があるからな気がします。


で、わがまま万理とその上をいく園子ですが、わりと可愛いよね。
私はこの二人は、性格わるいやっちゃなーと思うけど、そんなに嫌悪感はわいてこない。何故だろうか。
どことなく可愛いげ……というかなんというか、があるような気がします。


――私の考え違い、読み落としなどがありましたらご指適下さい(ありそう^^;)


■他の感想を読みたくなったら…

雲上四季

――この本のリーダピリティの高さを良く表している感想です。推理小説としてのこの作品の良さも分かる。

「鈴虫ホイッパー」
――この小説の良い所がよく分かります。最初に読んだ時の事を思い出して、なんとなく嬉しくなったり。

「本」
――物語のあらすじや感想が、上手くまとめられて、どういうタイプの本なのか分かりやすいです。