宗国屋敷

ある種の叙述トリックというか「文体トリック」だった。貫井徳郎さんのデビュー作なんかも、この手の文体トリックだ。小説ならではの仕掛け。文章だけで確固とした雰囲気を作れる人にしか、使えない技だなあ。小松さんはこの手の純日本風な文章を書くと、上手いんだよな〜あ。小松さんが大きな賞をSFというジャンルながら取れたのも(SFへの偏見が今よりも厳しかった時代に)、普遍性や社会性のある文章を書けたせいも大きいような気がしてきた。


小説の内容をいえば、フェミニストの立場からすれば、とんでもないことだよね。女性をずっと従属的な立場にさせとこうなんて、何という勝手な望みなのだ! しかし、この手の純日本的な道具立ては私も萌えだよ。「お情けをいただきます」か。わははすごいな。
小松さんのこの小説の文体は、パッと見ると日本的な叙情あふれる雅びやかな文体だけど、どうも普通の純文学系文体とは少し違う。実は私は、谷崎・三島系の文体がやや苦手なのだけど、小松さんのこの手の文体は好きだ。どうしてかな、と思ってよく見てみたら、句読点が多いんだね。
だから、あんまり息切れしないで読めるみたい。ちょっと多すぎるかな? と思わないでもないけど、句読点の分量によっても、印象がだいぶ違うんだなあということが分かって興味深かったです。
ちょうどいい具合にひらがなが多めなのも好き。