クラインの壺

クラインの壺 (講談社文庫)

クラインの壺 (講談社文庫)

選ばれた主人公は、バーチャルゲームにテストプレイヤーとして参加する。だが、どっちが現実で夢かだんだんと分からなくなっていく、という岡嶋二人さん最後の作品。


読み返してみたら、思ったよりもページ数が少なかった。もっと長い話だった印象があったのだけど、それくらい初読時の印象は強かったのかな。
この話は、岡嶋二人名義で出ているけど、実際には井上夢人さんがほとんど一人で書いたような本らしい。話のテーマがとてもしぼり込まれていているなあと感じまた。面白かったです。
ただ井上さん一人だと、岡嶋さんのと違って、「揺れ」が無いなあとよく感じます。岡嶋二人名義の時の方が「揺れ」、つまり、色々な読み方が出きるような、複合的な要素がある作品が多かったなあと。それは当然であって、井上さん一人で書いた方がすっきりしていて、井上さん自身の持ち味はよく出ているわけだけれども。
でも私は揺らぎがある小説も好きなので、岡嶋二人時代の作品を時々懐しく思うのでした。