「メドゥサ、鏡をごらん」

一番最初に、まず文字のフォントが違う事に気がついたので、「ああ、これは作中作とか、メビウス系タイプの展開になるんじゃないのかな?」と思った。
そしたら、だいたい予想が当たってたので、うーーーむ。
最後がミステリじゃないとかはおいといて、「それで終わりかい」という感じは拭えなかった。


と言っても井上さんなので、ページを先へ先へとめくらせる力は非常に強いです。読みやすい文章もいつも通りです。


メドゥサになった少女の怨念が、結局ただの「理由づけ」みたいなもので、それほど小説全体の「仕掛け」として、作動してないように思えた。
あくまで物語の展開を面白くする為の飾りというか。そういう雰囲気。
だから、最後の収束感が薄く、尻すぼみな印象を受けてしまったのだと思う。
メドゥサの少女の、怨念というか、そういうのがもっと深いところで小説全体に作用していれば、最後が浮かなかったのでは……とも思います。よくある普通のミステリ的な動機として消費してしまってるのが勿体ない。


井上さんは、デジタルな印象を受ける人なので、そういう風に題材を扱うのは向いてないだろうとは思うものの。


読んでる最中は、とても面白かったんだけどね。。まあこれは、私の好みもあるのかもしれません。


他の感想を読みたくなったら…
「しろじの書評」
この小説を読んでいる最中の幻惑される感じが伝わってきます。

「魅 館 箱 」
活字が違うのが罠だと言っている。なるほど、そういう考えもあったか。

「なまもの!」
読後感の悪いのが真骨頂だそうです。ああ井上夢人読みだあ。