そして粛清の扉を(黒武洋)

そして粛清の扉を (新潮文庫)

そして粛清の扉を (新潮文庫)


読んでいる最中は面白かった。確かにある種の爽快感が沸き起こるのを否定出来ない。
いくら悪どい高校生とはいえ、命の危険にさらされたら、もう少し脅えた行動を取るのではと思ったが。
親達の側にもっと複雑なドラマがあると良かったが、そうなると無駄に話が膨みすぎるのかもしれない。
ラストのどんでん返しには見事にだまされた。
最初に出てきたサンタクロースの若者の存在が印象に残った。確かに彼はかなり悪い奴だが、しかし完全な「悪」の存在として書かれているわけでもなく、小説において不思議な役割を果たしている。
このような人物の書き方をされると、印象に残り、この小説は決して勧善懲悪ものではないのだなと感じる。
善悪の混沌とした所が、現代らしくもある。