「七人の中にいる」

ペンション「春風」のオーナー・晶子のもとに、21年前のクリスマスイヴに起きた医者一家虐殺事件の復讐予告が。現在の幸せのために、葬ったはずの過去なのに―折しも明後日に控えたクリスマス・パーティーに常連客が次々とやってくる。元刑事・佐竹の協力で明かされていく客たちの身元は?オルゴールの蓋が開き、旋律が流れるとき、封じてきた惨劇が甦る
――「BOOK」データベースより


出ました、The・孤立した・雪の山荘! 別名クローズド・サークル。
読み始めると、期待通り、直球ど真ん中の設定のミステリでした。


ペンションで脅迫者のたび重なる脅しにおびえつつ客の様子を観察する晶子と、街に出て脅迫者らしき人物の過去を追う元刑事の佐竹。二人のパートが交互に進んでいきます(こういう所もストレート)
犯人の方は、わりと早い段階で分かりました。題名もヒントに……。
この小説の盛り上がる所は、ペンションにやってきた客は、殺人犯人以外も全員がそれぞれ色々な「ウソ」を隠し持っていたという事。
そのウソが一組ずつ暴かれていくのです。
でも何故か、ウソがばれてからの方が、客同士は前よりも親しくなったりして。


そんな中、晶子の恐怖はどんどん増していく。
彼女にも人には言えない過去があるので、警察はおろか、明日結婚する恋人にさえ脅迫されている事を打ち明けられない。
だから自分の異常な態度を恋人や子供の目から隠さなければならない。この設定にも緊迫感が生まれる要因があります。


最後は脅迫者の正体と過去が分かり、正面から対決しなければならなくなるのですが、ああこういう表現は上手いなあ……と素直に納得しました。ただもうちょっとこのシーンはゆっくり書いて欲しかった気もします。


ツボを抑えている作品なのに、あまり知名度はないような。クローズト・サークル系が好きな人はチェックしてみても良いのでは。