偽のデュー警部(ピーター・ラヴゼイ)

ISBN:4150747016
バラノーフは妻を殺して自由になるため愛人と船に乗り込んだ。そこで軽い気持ちでつけた偽名のせいで、元腕利きの刑事と間違えられ、事件を解決しなければならなくなる。


これがピーター・ラヴゼイか。ううむ……。さすが個性にあふれてるな。
「ダイナマイトパーティーへの招待」は合わなかったのだけど、本書は有名な作品だと聞いて挑戦してみた。たしかにこれは傑作だ。
だけど……自分と微妙にピントが合わない。なんだろうこの感覚。すごく不思議だ。完全にアウトじゃないけど、どうしてここに来ないんだあ、と地団駄ふみたくなる微妙にズレた角度に球がきた感じがします。
でもストーリー的にはとても面白かったです。もしかしたら再読したらまた印象が変わるのかもしれない。


まずは人物の書きかたがとにかく特徴的だった。贅沢に人物や風景の描写をとりいれて、ゆっくり紳士的に物語を進めていくあたりが、ジャック・フィニィを連想させました。


登場人物達が、また口が上手い。みんなどうしてこんなに会話が上手いのか。あんなに中身的にはふわふわしている人たちなのに、どうして会話だけはこれ程決まったセリフが言えるのかと、主人公カップルのウォルターとアルマを見ていてつくづく思いました。二人とも状況に流されやすいタイプなのに、台詞だけ聴いてると、非常に有能で知的で深く物事を考えていてとても経験豊かな人みたいだ。
そのギャップが違和感の原因かもしれない。ああいう幼い内面の人達があれだけ立派なセリフを言えるだろうかという。それともイギリス人はどんな人でも口が上手いのかも。(なわけ無いか)

訳もとても上手かったです。全体的に「洗練されている」という印象を受け、旅行しながら読むのに向いている小説かもしれないです。