キャル

簡単な仕事をやるだけのロボットだった筈なのに、なぜかご主人のような作家になりたいという気持ちを持ったキャルは、改良を重ねるうち、立派な小説を書くようになるが……という話。


アシモフのロボットだーー! ロボットー!アシモフのロボットを見ると、テンションがおかしくなってしまう。
話としては、非常に「アンドリュー NDR114」に似ています。
思えば、鋼鉄都市シリーズの世界観からして、「人間がロボットを恐れる」というのがアシモフの基本だけど、どうしてそうなんだろうね? と、ちょっと不思議に思っています。アシモフはロボットが好きだろうに、何故作品に出てくる人間は、ことごとくロボットを恐れるのだろうか。親が子供を思う気持ちと似てるのだろうか?


さて、この小説には、アンドリュー NDR114と違ったもう一つのテーマがあります。それは「小説家になりたい」
アシモフは、本当に本当に小説家が好きで、そして「アイザック・アシモフ」と名前(存在)が好きだったのだなあ、というのがこの作品を読むとよく分かります。それは素晴らしいことだね。
本書に出てくるロボットは、主人が小説を書いてるところを見て、本当に楽しそうだと思うのですが、小説を書いている小説家が楽しそうに見える記述なんてほとんど読んだ事が無いよ。アシモフはそうだったのだろう。いやあ凄い。


うーん、もしかしたら実はアシモフって「偉大なるアマチュア」だったのかも。仕事ぶりが多方面にわたってたり深かったり権威だったり、当然プロフェッショナルな知識があるので、そうは見えないけど、実はプロというよりはアマチュアの側に近いのかもしれないなあ、なんて思った。だって、好きなもの以外は書こうとしないなんて。
この作品は「ゴールド」という著作の中に収録されてます。
そうそう、この「ゴールド」の中で、アシモフはイライジャ・ベイリというキャラが一番魅力的だと個人的に思ってると書いてある箇所があったんだけど、おおお、私も同感です。ベイリ好きだなあ。
ゴールド―黄金 (ハヤカワ文庫SF)