喪われた故郷

ISBN:4488279031

彼女はわたしをしげしげと見た。
「目だけは変わってないわね。あいかわらず秘密でいっぱいだわ」
――「失われた故郷」P50


相変わらず、なんて微妙な話を書くんだ、マイケル・ナーヴァ。私のツボをいつもかわすことで有名な彼(自分の中で)なんだけど、ストーリーの語り口は大好きなんだ……。好きというよりは一度読み始めると、先を知らずにはいられない。
おかげでこの小説も一気読みしてしまいました。


久しぶりのリオスはやっぱり相変わらずリオスだった。前回は無実の人二人を信じてなかったのに、今回出てくる小児愛好者の容疑者を信じてしまうのは、何故なんだリオス! 弁護士が主人公の作品は数あれど、少児愛好者の弁護をするミステリはあまり無いんじゃないかな。マイケル・ナーヴァっぽい。
そして彼と彼の姉との関係も珍しかった。普通分かり合えない姉がいる故郷に帰るプロットがある場合は、そこで何らかの発展やら決裂やら対決やらがあるはずなのに、ほとんど何も変わらないで、かわす。何か凄いと思った。非常に不思議な人間関係だった。
ところでジョシュのくるくるの頭が可愛いと思う。しかしそんなジョシュも、前の巻ではなんか酷いことをしていた記憶があるんだけど・・・。にしてもリオスはもてまくるね。途中から数えてたんだけど、この作中でも4人の人がリオスを好いてましたよ。あ、ジョシュを抜かして。よっぽどハンサムで魅力的なんだろうな。


で、ちょっとネタバレになっちゃうんだけど、途中で浮浪者と会話をしてお金をあげるシーンが、最後にまた関係してくる所が好きだった。
最後の方になってリオスはこの浮浪者と再び合う。彼と話している間に、彼がリオスのかわりに死んでリオスは求われる。上手くて切ない場面だなあ。
会話もいつものように上手かったです。