猫丸先輩の空論

猫丸先輩の空論 (講談社ノベルス)

猫丸先輩の空論 (講談社ノベルス)

※ネタバレありで書きます。
ふんわりと口当たりならぬ目当たり(?)が良いので、小説が読みにくい時にでもすらすら入る。文章に柔軟性があります。
でも全体的に冗長気味。特に丁々発止の会話に無駄が多かった。あのような台詞回しは、たとえば舞台の上で演じられるなら映えるだろうけど、小説として読むには、ちと長い。
本書の伏線はどれも分かりやすかったので、地の文に伏線を書くのではなく会話に伏線を入れると良いのではと思った。会話に入っている伏線もあって、それは分かりにくかった。

・「水の中のなにか」
ペットボトルの水を使って、光の屈折を利用した虹を作るのだと確信して読んでいたら違った……。
イラストレーターの視線が、細かい形や色に注意がいっているのが、その職業らしくて良い。
ところで、八木沢は地の文で猫丸先輩をはっきり迷惑がったり、邪魔者扱いしたり、恩に着せているのが、私はどうも嫌なのです。口に出して言うなら、仲がいい軽口なのだろうと思うけど、地の文で言ってるとつまり本心ってわけで、本心だとしたらちょっとねえ。
ま、八木沢は口に出しても迷惑だと言ってるので、つきまとう猫丸の自業自得とも言える。

・「とむらい自動車」
私は反対に、事故を起こそうとしているのでは、と考えた。事故現場に手向けに来た人を狙ったのかなあとか。そしたらこれはうーんちょっと突飛な気が。愉快犯の可能性を否定する根拠が薄ぎるなあと。愉快犯なら電話を調べてかける労力くらい何でもないのでは。 
あと猫丸先輩は、もっとノリがいい人とつき合った方がいいのでは。融通がきかない人をからかうのが面白いのだろうけど、いたずらは引っかかる相手もある程度ノってくれないと、第三者としてこのパターンをいくつも見ていると、だんだん疲れてきた。倉知さんの昔のネット上の行動も思い出すし、あまり好きじゃない。

・「子ねこを求え!」
結構感心しました。あ、その手があったな、と。「麻雀の白」を使った例え話は良い。しかし実際にはリボンの色で見分けるのが心理的に普通だろうと思うので、あと一つ説得力のある伏線が欲しかった。

「な、なつのこ」
これは小説として面白かった。キャラが豊か。
・「魚か肉か食い物」
この解釈からすると、いきなり飛び出すという行動は大袈裟すぎるのでは・・(せめて何か言う余裕くらい残っているのでは、と)


全体的に、「説得力をもたせるための工夫」が足りてないです。読みやすいは読みやすかったのだけど……。