今年の生贄

「今夜はハロウィン。まもなくあなたに危険がせまるでしょう。私は魔女だからそれがわかるの」……と主人公の少年ハロルドに手紙が届いた。手紙を出した少女グロリアは真剣でかたくな態度で、半信半疑のハロルドを部屋にまねき入れる。
終始思い詰めたハードボイルドな態度を取るグロリアだが、

「冗談いっている場合じゃないわ、ハロルド。あなたの生命が危険に瀕しているのがわからないの? 」
彼女は立ち上るとミルク瓶を冷蔵庫にしまいこんだ。それからピーナッツバターの壺を取り上げ、流しのそばの高い戸棚に乗せた。戸棚を開けた時彼は息を呑んだ。どの棚にも同じような容器がいっぱい並んでおり、いくつかは二段に積み重ねられている。
「へえ! きみがいままで平らげた数か?」
彼女は赤面した。
「いいえ――そうじゃないけど。お昼はオフィスの向いのカフェテリアで食べているわ。私――私って料理がだめなの。家ではママに任せきりだったから、ここに越してくると、だれも教えてくれる人がいなくて」 p295


かわええ〜(*´▽`*)
ロバート・F・ヤングの書く女の人はたいてい可愛いよね。ほわわん。
これは、すぐ前までのハードボイルドな言動とのギャップが可愛いのです。
ツンデレというか、私はずっと昔からこの手のタイプに弱い……。
小説的には、グロリアは本当に「魔女」なのか「生け贄」とは何のことなのか、謎が気になるストーリー展開が◎。
ヤングといえば、ピーナッツバターのお約束も嬉しい作品。
恐怖のハロウィーン (徳間文庫)に収録されてます。