鴉 (幻冬舎ノベルス―幻冬舎推理叢書)

鴉 (幻冬舎ノベルス―幻冬舎推理叢書)

再読。いや3回目かもしれない。
いやあこの本はねえ、名作だと思うけど、烏有さんといい読んでいてじくじく心の暗い部分を刺激するような主人公がなんともかんとも。
しかし私は麻耶さんの小説好きです。まず「世界」が確立してるところがいい。何はともあれ世界が確立している小説が大好きなのです。閉ざされた空間。独自の世界。空気の色までが違う、完全に一個の世界。そして、水ももらさぬ世界が最後に壊れ全てが灰燼に帰す、その華やかで派手で儚い刹那。私はこういう話が大好き、なのに諸手をあげて快哉を叫べないのは、やはり読後感の悪さのせいか。これも一つの味といえば味だけども。


何かが壊れる時は新たな世界の始まりでもあるけど、麻耶さんの小説の場合は、全てが壊れたら幽界の始まりな気がする。壊れてしまった昔の世界をつなぎあわせて、また始めようみたいな。でももう壊れてるから、今度は幽界の世界。元々麻耶さんの書く小説って、そういうメビウスの輪のようなエンドレスの形態をとってる話が多いし。一作一作で世界が壊れていくけど、でもそれ自体ももっと大きな枠組みでつながって一回りしてる感じがします。


さてだいたい筋書きは覚えてるので、伏線を追って読んでいくと服の描写にも気を配っているのが分かる。
結構伏線はあるものなんだ、感心感心と思いながら読んでました。

そしてどこにでも現れるなあメルカトル、とか(笑)
彼はどこにいても違和感ありまくりですが、この小説の時ほど強烈な違和感を発してる時はない。あの世界観にシルクハットはすごいよ……。