六番目の小夜子(恩田陸)

六番目の小夜子 (新潮文庫)

六番目の小夜子 (新潮文庫)

読みやすく、描写力が優れている小説です。繊細な表現が光っていました。
小説に対して、真摯に向かい合ってるなあと感じます。一作目は作者がよく出ると言うし、この小説は、素直に恩田さんの特徴が出てると思う。


ただ私は、ヤマ! タニ! がしっかりと別れていて、盛り上がる所では一気に盛り上がる、という小説が好きな傾向があるので、そういう人からすれば、中途半端に盛り上がり、また消え、盛り上がり、消え、というのが繰り返されて、うおー欲求不満だあーという気持ちも大きかったです。
演劇のシーンは、囲まれるような恐さがあり面白かった。そこで何か決定的な出来事があると思ったのに、そのまま冬になだれこんでいくとは、そうくるかあと。
沙世子の正体は結局##だったと分かってしまうのも残念。だとしたら結構大変な事をしてる気がしないでもない。


あとは、やはり吉田秋生吉祥天女にやや似すぎているなあと。謎めいた転校生、周りから見た小夜子の感じ方、流れる雰囲気。名前も同じだし。
正直これはどうなのかなあという気がします。力量ある作品なことは確かなのですが、そう感じた事が読んでいてずっと引っかかってしまいました。