白馬山荘殺人事件

白馬山荘殺人事件 (光文社文庫)

白馬山荘殺人事件 (光文社文庫)

1年前の冬、「マリア様はいつ帰るのか」という言葉を残して自殺した兄・公一の死に疑問を抱く女子大生ナオコは、新友のマコトと兄の死んだ信州白馬のペンション『まざあ・ぐうす』を訪ねた。マザー・グースの唄に秘められた謎。ペンションに隠された過去とは?暗号と密室トリックの謎に挑む、気鋭の本格推理力作。
――内容(「BOOK」データベースより)

読むの三回目です。この話はマザーグースの謎に気を取られていると密室殺人が出てきたり、過去のエピソードや最後にどんでん返しがあったりと、盛りだくさんなのに割と軽く読める所が好きです。
ただそれらの要素の相互性が薄く、今ひとつ纏まりに欠くようにも感じるので、本書を一本貫くテーマがあればもっと良かったと思いました。これは三回も読んでいるから感じるのかもしれないですが。

性別トリック(?)がブラフだったというのは珍しいです。本筋のミステリとは何の関係もないんだよね。何故男にしなかったのだろうか。でもカッコいいからいいか。主人公の菜穂子は、自分の女性性を利用しているのに、ちょっと言いよってくる男には軽薄だ、つまらない男だなんだと陰で言うのはいただけないです。クルミさんもああだったし……。


犯人は一番最初に読んだ時は分かった。カラスに関する会話でフェアな描写があったので。でも、二回目、三回目読むと、逆に犯人を間違えるようになりました。鼻を突っ込んでくる男の方に気を取られてしまって……。何故再読する方が作者の罠に引っかかりやすくなるのだろうか。謎。
マザー・グースの暗号は解いていく過程が面白い。密室トリックはパズル的なのですが、真相が分かる前のミス・リードが話を膨ませています(なおかつそれが犯人に気がつく一因ともなっている)

人間ドラマよりは推理小説としての仕掛けに重点を置いた、本格ながらさらっとした作品です。