「十二月の鍵」とアンディー・メンテ作品

猫形態に改造されたジャリーは、惑星改造機を20個だけ買って、時間をかけながらゆっくりと惑星が、自分たちの身体にあう環境になるまで待つ。

最初に読んで感動した時から、この季節にはいつも「十二月の鍵」(ロジャー・ゼラズニイ)を思い出す。
ということで久々にゼラズニイを選んで読み始めました。冬になったら読みたいと思ってたんだ。「伝道の書に捧げる薔薇 」に収録されています。


まずは、ゼラズニイ特有の出だしからしびれます。あの落ち着いた感じ。渋すぎる一人称。渋いだけでなく芯の熱さや青さも感じられる。
そして、惑星が改造させられて、だんだんと氷の惑星になっていく描写。
浅倉久志さんの抑制のきいた訳が、またとても合ってるんです。


読み終えて、なんかすごく不思議な気持ちになった。自分の気持ちが、透明に細くなって、ずっと先まで飛んでいき、そこで静かに凍っていくような。
SFだなあ、というか。はあ。「物語」だなあ、というか。


どうしてゼラズニイの主人公はいつも神になりたがるんだろう?
自分の理想の環境を犠牲にしてまで、というのは魅力的だけれど。最後に小さく咳をするところとか、格好いいね。
そういえばゼラズニイは、いつも神話をベースにしてたという事を、久々だから忘れていた。
なんのかんのいいつつ、この話を冬に読めたのは幸せでした。また来年も読むと思う。


あとこの短編を読んでると、アンディー・メンテ作品のゲームを思い出します。
必要以上に説明しない所や、スケールが大きい所、静かな不思議な孤絶した世界観、キャラの言動、あとは猫な所(笑)
ジスカルドさんの作品の、特に物語作りのファンの人は、この短編も合うのではと思う。