「マニアックス」

マニアックス (講談社文庫)

端整で格調ある海外ミステリのような文体。表面だけを真似ているのではなく、芯からそういう雰囲気です。どうやってこういう作風や文体が作られていったのだろうと思っていたのですが、著者の「ミステリー倶楽部へ行こう」というエッセイ集（書評集）を読んで納得行きました。

そして、この作品集。
一見、出来不出来の差が激しい気がします。しかしそう感じるのは、話の方向性がバラエティに富んでいるからかもしれません。

一番好きなのは、「孤独の島の島」
どうしたらこういう話が書けるのだろうか。
元々私は、「常世国」とか「流木」「えびす様」「漂着物」という題材が好きなのですが、こられを使って独特の世界が作り上げられています。
しみじみと怖い、静かな作品です。
多くの題材が不協和音を奏でずにうまく調和している。そこが凄いです。

山口さんは、わりと「作中作」のような作品、もしくはメタミステリも多く書く気がしますが、私はこういうタイプのオチのつけ方は今一つ好きではないんですね……。
たまたまこの本を読んだ時に、似たような「作中作」系の本を読んでいたから飽きていたのだろうか。
意欲的な事に取り組む姿勢は凄いと思います。
雰囲気はそれ程似てないのに、法月綸太郎さんと似てる感じを受けます。短編だと特に。
「素材の扱い方」が似てるのかもしれない。

表紙と小説の雰囲気が良く合っています。