「隣人」永井するみ

隣人

隣人


永井さんの文体は、読みやすくてきれい。そして、静かに冷たい。そういう所が好きです。
ただこの本は、ちょっと「悪意」が心に突き刺さりました。少し鼻につくというか……これくらいで恨まれる男達の立場って一体……と思わざるをえない。
最初に永井さんの本を読んだ頃は、こういうタイプの女心の表現は珍しかったので、そこも高く評良かったんだけど、この本のように似た心理(似た動機)が続くとまたか、と思ってしまう。


にしてもわがままな女の人達で。いや「わがまま」の一言では到底括れないのだけど。
気持ちは分からなくもないけど、何も殺さなくても……。
その「存在」が嫌なのだろうか? 自分に「干渉してくる」という、その存在がただ自分の目の前にあるという事。
それが彼女達にとって一番の罪なのだろうか。
「敵」というほどには、殺す相手に対して熱い感情を持っていそうもないのが、また冷えびえと恐いというか。
小説としては「至福の時」が好きです。 少しミステリー。
「おうどん」が印象に残りました。
なんのかんの言いつつ全部読んだので、決して嫌いな作家さんではありません。