風流冷飯伝

風流冷飯伝 (新潮文庫)

風流冷飯伝 (新潮文庫)

再読。
最初に読んだ時は、お、面白い〜! と本気で ビックリしました。
翻訳小説の口直しのつもりで読み始めたのが、表紙ののほほん具合から、まさかこんなに精密な構成がある話だったとは。
短編に似た構成になっていて、終盤に行くに従って、最初ののほほんとしていたエピソードの数々の裏に、実はとあるストーリーが進行していた事が分かり、最後に一つの大きなシーンに集約されるプロットが、本当に好きだー。感心した。
ワクワクするし、話の裏をよんだり表を読んだり、騙されたり膝を打ったり、いやはや。
エンターテイメント小説として面白いのに加え、推理小説として読んでもレベルが高い。


語り口は講談調でちょっとふざけた丁寧な文体。作者の視線が入ってきていて独特です。飄々として読みやすく、時代物を読み慣れてなくてもほとんど抵抗を感じなかった。
それにキャラクターも魅力的。幇間(たいこもち)の一八や、おじょも、数馬もいいね。
作者の世界観や視線は、色々な経験をしてきた年長者だなあ、というのをうかがわせる感じで良かった。さらに、将棋が好きな人ならもっと楽しめただろうなあと。拓磨が将軍と将棋をする場面なんて、小説を読んでいるということを忘れて、生で観戦している気分になった。再読でも面白かった名作です。色々な人におすすめ。