「自分の考え」整理法(鷲田小彌太)

この本は中井紀夫さんの名作「虚無への供物」の、一番重要なネタバレを前触れもなくしています。
もうーー。読んだ後だから良かったものの、全然関係ない本を読んでいて、いきなりそんなことをされたら困るよ。アガサ・クリスティについても、色々書いてるし……。
まあ、小彌太さんには哲学書関係でお世話になっているので、一応置いておきまして。
それを抜かしたとしても、この本は何を書いてるのか、内容があるようで無いような。著者は考える前にやり始めろ、と哲学者にあるまじきことを言ってるので、その実践がこの本書なのだろう。構成が無く、思いつくままに書いたような本。


今の世の中、考えるのに時間をかけるようでは駄目だと著者は書いている。それはいいけど、小説もプロットを立てる前に書き始めろ、と小説家でもない著者が書いてあるのには納得しがたい。で、例として、「虚無への供物」が出てくるのです。
どうしてここで虚無への供物なのかー。栗本薫さんや内田康夫さんや赤川次郎さんなら、本人もプロットを作らないと広言しているから例に出すのに適切だろうけど、「虚無への供物」は、とても練られたプロットがあったように感じた。
それに、文章に関しては書く前に構成を立てた方が、質の高いものが出来る人が多いだろうに。


三分割など、著者の本職と思われるジャンルについての文章は面白いので、そういう方向性の本の方が出来がいいと思ってしまった。