冒険小説のフィールドガイド(本山賢司)

ISBN:4152034947
冒険小説に出てくる動物にスポットライトをあてるという、めずらしい本。著者が動物の絵も描いてるんだけど、イラストレーターが本職だけあって、うまーい。動物だけじゃなく冒険小説の内容にも言及していて、その紹介の仕方も上手く、食指が動いた小説が何冊もあった。
また、冒険小説の質を決めるのはイマジネーションに飛んだ描写の積み重ねというのには深く納得です。

この描写力のすぐれた作家たちの冒険小説を日夜読んでいて、はたと気がついた。彼らは、獣が通った、と書かないで、クズリが通ったと書く。鳥が、と書かないで、カスピアアジサシがと書く。なぜだろう。
つまり彼らはその動物を知っていて、そのイメージがその個書の描写以外にありえない、という使い方をしている。
もし僕が作家だったら、ヘビのように気味が悪い、と書かないで、ハブのように気味が悪い、と書くようなものだ。ハブが恐ろしい猛毒の持ち主ということを知っているなら、より効果的だし、ハブがヘビであることだけ知っていても目的は果たせるわけだ。
この小さなイマジネーションに飛んだ描写の積み重ねこそが、マクリーンやイネスが大人の読者に受け入れられた要素の一員である。
それまでの冒険小説がもっていた荒唐無稽の粒子の粗さを補う、格好の充填剤になっている。

――「冒険小説のフィールドガイド」あとがきより


以下は何となく気になった動物です。

センザンコウ

まるで魚類やは虫類のように鱗があるがれっきとしたほ乳類だ。鱗は人間の爪のように皮膚のうえに生えている。真皮のうえなので鱗のあいだには体毛もある。この角質の鱗は幼獣のときは柔らかい。
センザンコウは外的に襲われるとボールのように身体を丸める。アルマジロハリネズミと同じである。この状態を防御球という。赤ん坊は母親の尾にまたがり、鱗のあいだに爪をさしこんで移動する。危険を察知すると母親はそのまま子供ごと丸まってしまう。
――『緑の地に眠れ』(ダンカン・カイル)に出てくるそう。

■エジプトトビネズミ、サバクトビネズミ

短い前足を胸元でそろえ、後足ですわるとき長い尾で身体をささえた格好はカンガルーのようだ。
外的から逃げるときは一足飛びで、跳躍に適した発達した後足を有効に使う。
後ろ足の爪は歯と同じように鋭いので、トビネズミはそれを使い、非常に複雑に枝分かれした坑道を地面に掘る。
球根、草木の根、種子、果実、死んだ動物の肉や昆虫を食べる。
――P138より