皇帝のかぎ煙草入れ(ディクスン・カー)

皇帝のかぎ煙草入れ (創元推理文庫 118-11)

皇帝のかぎ煙草入れ (創元推理文庫 118-11)

うわー、修羅場だ……。男女の修羅場だよ。推理小説としてよりも、どろどろの恋愛模様に気がいってしまう。おそろしい。
しかしトリックと犯人が分かる場面では、推理小説として大いに面目躍如。心理トリックも凄いけれど、二人の登場人物がそれぞれ違う目的で事件に関わっているので、一人の犯人によって行われたと思われた犯罪の別の面が、謎解き時に鮮やかに浮かび上がってくる、その仕掛けに感心しました。ミステリの教本だなあ。江戸川乱歩が絶賛したのも分かります。


ところでネッドのような人が女性にとって危険というキンロス博士の意見には同感です。あの手の男はやばい・・。
最後のシーンは微笑ましくていいな。直接書いていないところが余韻を作っています。
人間の心理の書き方が今読んでも優れているので、全く古さを感じさせないのが凄い。カーとは相性がいいのかも。