悪党どものお楽しみ(パーシヴァル・ワイルド)

悪党どものお楽しみ (ミステリーの本棚)

悪党どものお楽しみ (ミステリーの本棚)

元いかさま賭博師で、現在は農夫をしているビルが、次々にギャンブルのいかさまトリックを暴いていく痛快な本です。
再読です。このシリーズ大好き。ユーモアとふんだんに盛り込まれるいかさまトリックに、魅力的なキャラクター。一話ごとのビルの最後の締めが、どの短編も非常に決まっていて、「切れ味のいいラスト」というのにぴったり。

・「シンボル」
この話は渋い。こんな渋い話を一話目に持ってくる短編の構成が珍しい。
いかさまが成功しなかった理由は、当然父親が何らかのトリックを使ったためだろうと想像していたのに、そんなちゃちな考えを吹き飛ばしてしまう真相です。
私は 『世界短編傑作集3』 に収録されている「堕天使の冒険」でこのシリーズを知ったので、ビルにはこんな過去が……と新鮮でした。

・「ポーカー・ドッグ」
電報が笑えるのなんのって。
最初はフルネームで自分の名前を書いていたのに最後は名前だけになる所や、夜間書信電報が交じっている所が、芸が細かくて好き。
何故ビルは「あまりに陰気くさいのは嫌だが、元気過ぎるのもよくない。だが少しばかり陰気な元気さ、あるいは元気な陰気さのある犬が欲しいんだ」……なんて訳の分からない犬を欲しがったのかが、最後の最後で分かる構成がミステリ。でも半分はトニーをからかってたんだと思う……。