ニセモノ師たち(中島誠之助)

ニセモノ師たち (講談社文庫)

ニセモノ師たち (講談社文庫)


骨董の世界って、ヤクザな世界なんだったんだ……というのが第一印象でした。
プロ同士が騙し騙されは当たり前。素人さんには手を出さない。(つまりにせものを掴ませたりはしない)


でも現在ではもう、本物のヤクザと同じで、バンバン素人が狙われてるらしいです。
古美術鑑定」や「古物商」に対して私が持っていたイメージとは、かなり違いました。


例えば、大きな屋敷を借りてそこの家の主人になりすまし、お手伝いさんまで雇ってまでニセモノを売りつけるというインチキ商売もあったそうです。そういうのを「舞台をはる」というそう。


また競り市の前では、まずターゲットをしぼる。そして競りが始まると、仲間内で結託して、ニセモノの茶碗の値をつり上げていく。(これをテコヤリという)。
そういう風に目利きと知られた一流業者が三人ほどで高く高く競っていくと、脇で見ていて、あの目利きたちがあそこまで競るというのは、モノは間違いないだろうと、つい声を出してのってしまう。
そうしたらしめたもので、今まで競っていた人達は、いかにも残念そうな顔をして諦めるといった寸法だ。
勿論、にせものの品物は、ターゲットが欲しがるだろう物を特定している(この品物をネコと言う)


しかもこういう事をやるのは、そこら辺の人ではなく、人品いやしからぬ業界でも名の通った人達ばかりだというのだもの。
彼らは裏でつながってる事が暴かれないように、次の日に同席しても挨拶一つしないそう。
お、お、おそろしい〜〜〜っ。そりゃ、騙されるっちゅーねん。
そういう事を、「一流の目利きと名の通った人」でも普通にやるのが怖いですよ。
だまされる方があほや、という感じですねえ……。それでも昔は素人さんにはやらなかったそうだけど、最近はどうなっている事やら。


それでは、中島さんは一体こういう事をやったのか? やらなかったのか? というのはこの本を読んでみれば分かります。
一応書いておくと、そんな酷い事はしてないので安心して下さいな。
もっとスリリングな体験も書いてあります。
印象に残った文章を上げてみます。

「翻っていうと、プロというものはニセモノもホンモノも両方がわかる。わかるということはプロの場合、ニセモノもホンモノも両方とも商売の材料にできるノウハウを持っていることです。ところが、アマチュアはホンモノしかわからないか、あるいはニセモノしかわからないという世界になります。P47

うーむ、清濁合わせ飲む、というやつですかね。