57人の見知らぬ乗客
57人の見知らぬ乗客―ミステリー傑作選・特別編〈4〉 (講談社文庫)
- 作者: 日本推理作家協会
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1992/05/15
- メディア: 文庫
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「結婚」(鮎川哲也)……SFですよ。鮎川さんのSF! でも、途中まで未来設定とは全く気がつかなかった。「探偵は真赤な大型封筒から、一枚のタイプした用紙をとりだしてみせる。」や、「おんぼろ車はポンコツ屋に払いさげて、2962年型の新車を買ったらいいではないか」
――だもんなあ。あんまりSFに向いてないね鮎川さん。とはいえ、作品の初出時が昭和37年なので仕方がない所でもあるのですが。オチは基本とはいえ、面白かったです。いわゆる、ウラシマ効果を使ったネタです。
「逢いびき」(石川喬司)……この本の中で一番面白かったです。しかも、ダントツに!!
「空は青かった。ぼくは十七歳だった。」の文章で始まり、「ぼくの隣りでは、二歳のお誕生日をむかえたばかりの姉さんが無心に眠っていた」
「ぼくと同い時で十七歳のお母さんは、」
「弟は三十五歳にもなるのに独り者で、パチンコ屋の住み込み店員をやっている」
と続いていく。
文章は今読んでも全然古くないし、ところどころに狭まれる、詩と情景が美しい。その美しさと”イヤな匂い”が、話に不安定な空気を与えていて、うまい。
オチが期待外れじゃありませんように、と祈るようにして読んでいったら、うん、これならいい!納得しました。
「イチゴという名の女のこ」(片岡義男)……あはは、これも好きですね〜。ショート・ショートとナンセンスはよく似合う。最後のセリフ「ねえ、ねえ、サトウくん、私たちはいまイチゴ・ミルクなのよっ!」で脱力しながら笑ってしまいました。ここで終わってるのはうまい。
「鳥のイメージ」(河野典生)……河野さんの文章は、端整で読みやすくて好きです。この話はちょっと文学してますね。
「不安な耳」(小林久三)……盗聴ものです。犯罪を盗み聞きしてしまったけれど、自分も法を犯しているので警察に届けられない……。そういうシチュエーションは、はらはらドキドキで好きです。この話はちょっと違うけれども。
「或る善良なる青年の出納簿」(西川清之)……出納簿……つまり、家計簿ネタです。一ページの家計簿でオチがついてます。笑えます。
「愛」(宮崎惇)…… アシモフのロボット三原則が使われている作品です! それだけで印象に残ってしまう。でもこの話は微妙に原則が破られてるんだよねえ。それが気になるなー。いや、結果としてなんだけど。ロボットにライオンの脳細胞が使われていたために起こる、悲劇です。
「飾り窓の中の恋人」(横溝正史)……飾り窓の中の人形に恋をしてしまった男の話です。もうシチュエーションだけでグッド! 先が気になります。オチはかなり現実的なオチになっています。ちゃんとミステリーになっているんですね。