一千一秒物語(稲垣足穂)

一千一秒物語 (新潮文庫)

一千一秒物語 (新潮文庫)

稲垣足穂さんの『一千一秒物語』を読みました。題名が途方もなく素敵です。そういえば稲垣さんのこの名前って本名なんだよね。すごいよなあ。
宝物のような本です。時々そっと開けてみるオルゴールのような本。真夜中に読むと、あっという間にすいこまれていってしまいます。


でもこの本は、実は無機質で暴力的ですらある。
柔らかい絵本のような印象を持って本を開くと、むしろ金属的な、カチンと空気が凍ってるかのような、殺伐とした情景に出会う。
月が殴り合いをしてたり、ピストルで撃たれたり。殺伐と言うには人の熱がないのも特徴かもしれない。
しかしそういう部分とあの美しい文章とが溶け合って、この本をますます上質な御伽噺たらしめています。
月と星と無機質な世界と。
少しだけ甘い情景も。
長さはショート・ショートよりも短い掌編集、一ページにも満たない話も多いので、一度は手に取ってもらえたらと思います。

■リンク
「・・・遊戯三昧・・・」
『お月様とけんかした話』のあらすじがのっています。