古武術の発見(養老孟司, 甲野善紀)
古武術の発見―日本人にとって「身体」とは何か (知恵の森文庫)
- 作者: 養老孟司,甲野善紀
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2003/02/01
- メディア: 文庫
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対談本です。この本を読んで感じたのは、一芸に秀でている人、もしくは一ジャンルに精通している人は、どんなジャンルの人とでも対等に話が出来るんだなって事です。物事はどんな分野でもつきつめると、共通する部分が多い。精通すれば精通する程増えていき応用したり話を広げたり出来る。
私もそういうジャンルを持ちたいものよ、と思いました。いわゆる「フィールドを持つ」という事だね。
さて、この本は日本人は「身体感覚」をどう捉えているかについて、西洋と比較したり、昔の武道の達人の例を上げたりして、さまざまな話題が展開されています。対談方式なので、ややとりとめのない所はありますが、対談者二人の豊富な知識や例え話が面白いです。ちょっとした雑学として人に話したくなるようなものも多い。
面白かった所は、
・江戸時代の一般の日本人は、腕と足をたがい違いに振らないで、同じ側の手と足を同時に出していたそう。だから、走る事が出来なかった!
武士や忍者や飛脚は走れた。そのように走る事は「特殊な技能」だったそうな。へええ。
・畳の大きさは織田信長が決めた。鉄砲玉がきたときは、持ち上げて盾に出来るようにと。それで畳は身が隠れるだけの大きさ、高さ、幅、厚みが決められたそう。あの厚みだと、当時の火縄銃なら貫通しなかったので。p76
……信長は本当に合理主義者だね。西洋的な考え方をする人だ。
・大脳がある運動をさせようとして、練習とかそういうことをさせていきますと、大脳のなかである特定の回路が動き始める。その回路が絶えず動いていますと、自動的に小脳のほうにそれとパラレルな回路が成立してしまうんです。それがいわゆる習熟、オートなんですね。
そうなると、運動そのものは無意識になってしまう。(略)
しかし、そうやってできあがった回路は、永久不変のものじゃありません。いまおっしゃったように、マニュアル、つまり大脳を関与させていきますと、またちがったタイプの回路が小脳にできてくるわけです。
――p185
――小脳と「パラレル」という所が面白いと思った。