「地球から来た男」

地球から来た男 (角川文庫 緑 303-9)

地球から来た男 (角川文庫 緑 303-9)

何と言っても表題作がピカ一でしょう。
どこまでが現実でどこまでがウソなのか分からない。それでも、切なさは変わらず打ち寄せてくる……。
こういうラストに私は弱いのでした。
例えば貴志祐介 さんの「クリムゾンの迷宮」の終わり方のように。
他には、東野圭吾さんの「パラレルワールド・ラブストーリー 」や岡嶋二人さんの「クラインの壷」。


上にあげた作品と共通した余韻が広がりました。
読んでいく内に現実と幻とがいつの間にか交じり合い、その分岐点がぼやけて分からなくなる話なのです。
さらっと終わるのに、印象に残る。
昔の作品ですが少しも古びてない。


この本全体で言うと、妙に医者が出てきたり「死」に関する話も多いです。
あっさりとした文体なので、陰気な感じは受けないです。