「エントロピーの法則」から仕事の計画性を考える

エントロピーの法則―21世紀文明観の基礎

エントロピーの法則―21世紀文明観の基礎

ジエレミ-・リフミン, 竹内均 著。
今となっては、エントロピーの法則という言葉はやや古くなってしまった感もあるけど、この法則は結構好きなので基本を押さえておきたいな、と。そういう用途にぴったりな本です。
とはいえ、物理学的な内容は少なく、エントロピーの法則と、人間社会(の世界観)とを対比させて論じている本です。なので専門知識が無くても読めます。最初に説明してくれてもいます。


印象に残ったのは、
・情報過多は大きなエネルギーの出費を伴う
――それと同時に無秩序が増大し、集中化と特殊化が促進されるとある。


知るという事は、将来必要可能なエネルギーを使っている事にもなるのかな。
今のこの情報過多の時代に読むと、感じる事は多い。


他には、下記の部分も印象に残りました。

どんなにうまく「植民段階」を乗りきり、「絶頂段階」に移行したとしても、いつかは、そのエネルギー源をまったく変えねばならない時が必ずやってくる宿命にある。
だから、問題は一つしかない。要するに、どんな文化であっても、エントロピーの転換期に直面せざるをえず、その時期が早いか遅いかの違いでしかない、ということを認識する以外に道はないわけである。
――「エントロピーの法則」P94

この本によると、人は危機にならないと(つまりエントロピーが飽和にならないと)方向転換をしないそうです。
このエントロピー理論を受け入れるとすると、世界は停止に向かっている、という事になる。世界は飽和に向かっている……。そして飽和するまで、途中で転換する方法はない。


……そうではない計画的な人や才能ある人もいるとは思うけど、私は確かに何かが「飽和」状態にならないと、物事を始めようとはしなかった。
だけどこの事実を私は知ったのだから、少しずつ、意識してエネルギーを変える(ジャンルをかえたり方法を変えたり、移行するなど色々)の準備をする用意が出来たらいいなと思います。


これと同じような事が、最近読んだ「古武術の発見」(養老孟司甲野善紀 著)にも載ってたな。ええと、P135で、

「あるパターンに入ってしまえば、そのパターンで仕事はできるわけですけれども、そのパターンから出られないと、将来は漬れてしまう。そうかといって、そういう基礎的なトレーニングに相当するものはどうしても必要ですね」

……結局、「変わらない」でいるには、「常に変化し続ける」事が必要なのかもしれない。ちょっとエントロピーとは話題ずれてきましたが。


他にも、谷川浩司さんの著述「集中力」にも似たような記述がのってました。
なんでも、羽生善治さんと対局した時、序盤から常識では考えられない手をどんどん指してくるのに驚いたそう。当時羽生さんは好調で勢いもあり、常識的に指してもそこそこ勝てただろうに、そうした戦い方に飽き足らず、いろいろな可能性を模索し、実戦の場で試みていたのだ、と。
調子のいい時こそ、新しい試みをする勇気を持つことである、ってね。
他にも、脳関係の本とか多くの本で似た文章を読んだ。


でも中々難しいよね……。
人間は歳をとるに従い「安定した環境に適応する能力」が発達するそうだから。それに逆らう事になる。


この本によれば、プラトンアリストテレスも「変化」を堕落と捉えていたそう。新しい可能性は堕落以外の何物でもなかった。となれば、今の時代は彼らには大いなる堕落と混沌に満ちた世界に見えるのかもしれない。


エントロピーについて少し。
エントロピーという言葉は、システム崩壊に向かう無秩序の度合をはかる尺度として定義される。
物理学上は、「熱力学の第二法則」
孤立系のエントロピーは時間の経過とともに増大していく。変化は常に一定方向であり、逆は起こらない。


――で、私にとっての見近なエントロピー増大は、本棚。これって本読みの人は大かれ少なかれ似たようなエントロピー増大に見まわれてるのでは……。
飽和しても増え続けてます。