金属の腐食 事例と対策(藤井哲雄)

金属の腐食事例と対策

金属の腐食事例と対策

金属の腐食現象について要因ごとに対策をまとめた本。腐食に関する用語解説もあり、専門的な内容ながらも読みやすかったです。この手の分野の中では良書でした。
簡単に内容をまとめてみます。


□腐食とは
腐食は電池反応であり、腐食の速さは腐食電池に流れる腐食電流に相当する。


□腐食の防止
腐食反応に対して逆向きの電流を与えることができれば、防食対策になるだろうことは容易に想像できる。水中で金属に電流を通ずることによって腐食を防止する方法を電気防食と呼んでいる。


□電食
電食という用語は広く一般的に使われ、マクロセル腐食や異種金属接触腐食にたいしても呼称されるが、本来の意味は、電鉄軌道からの漏電電流による腐食のことである。


□微生物腐食
こんにち、微生物が関与してステンレス鋼上にバイオフィルム(生物付着皮膜)を生成し、それが局部腐食を引き起こすと考えられている。(おそらく水中でおこる)
微生物腐食を防止あるいは緩和する対策としては、水質の改善、バイオフィルムの剥離除去、バイオサイドによる処理がある。


□天然海水中におけるMICのメカニズム。
ステンレス鋼の表面に有機物が吸着し、やはり表面に付着した好気性細菌は酸化酵素(オキシダーゼ)を生成し、有機物を基質として酸化する一方で、酸素の還元反応を触媒する。この還元反応の中間生物として過酸化水素が時間の経過とともに生物皮膜内に蓄積される。
しかし、過酸化水素は生物体にとって有害であるため、細菌はカタラーゼを生成し、過酸化水素を無害な水と酸素に分解する。
それと同時に、生成された過酸化水素の一部は酸素より強力な酸化剤として、ステンレス鋼表面においても、電気化学的に反応する。
このカソード反応の進行によってステンレス鋼の腐食電位は貴化し、結果的に孔食電位、あるいは隙間腐食発生電位をこえた場合に、局部腐食発生にいたる。

このように電位の貴化は、自然海水中の微生物が金属表面にバイオフィルムを形成することによるものとの見解が有力となっている。