椅子がこわい―私の腰痛放浪記

腰痛放浪記 椅子がこわい (新潮文庫)

腰痛放浪記 椅子がこわい (新潮文庫)

出版社/著者からの内容紹介
一九九三年から約三年間、激しい腰痛のため、死まで考えた作家の衝撃の闘病記。奇跡的に完治したその後の生活体験記を付け加える。

――いやあ確かに恐い。私は腰痛はないけど、一時期酷い眼精疲労にかかった事があるので、人ごととは思わずに読みました。夏樹さんの性格は、自分でも認めているようにせっかちで、「走り続ける」事が必要なタイプだ。私はここまでバイタリティに溢れていないけど、一部似た所もあるので、もしかして自分も無理して走るから、後でどっと反動がくるのだろうかと振り返ったりもしました。

何をやっても効果が無かった夏樹さんは、ついに心因性だと診断されるようになりますが、頑として受けつけない。しかし、結局は絶食療法と一年間の休筆宣言で治ったのでした。
夏樹さんが絶食期間中に受けていた点滴には、ほとんどすべての栄養素が含まれていたが、糖分だけは除かれていた。
夏樹さんは糖分だけが点滴から抜かれていた事実を、治療後に知らされたのです。


――これ、どうなの? この療法をやるお医者さんはとてもいい人なので、基本的には問題は無さそうだけど、100歩間違えれば洗脳療法だよね。
この本にはもっともらしく効用が書かれているけど、ありていに言ってしまえば、頭があまり回らないようにして、医者の考え、もしくは本人にとっての新しい自己認知を受け入れやすくする為なのでは。
そもそも、絶食期間中に点滴を受けるのも謎。身体が健康な人が行う絶食療法で点滴を受けるケースは初めて聞きました。糖分だけが抜かされている栄養素のつまった点滴を受けながらの絶食……。
点滴を受けない方が、まだしも健康的な気がするのは私だけでしょうか。うわー、心療内科ってこわいなあと思いました。(勿論全てがそうでは無いだろうけど)
この療法がいけないのではなく、事前に知らされてないのが引っかかるのです。
担当した医者の名誉のためにつけ加えますと、夏樹さんはそれで治ってるし、温厚な人柄で辛抱強く夏樹さんの話を聞いてます。治る見込みの無い友人を毎日見舞いに行くエピソードには感動しました。


ともかく、本人が何のストレスも意識してない場合でも、心身性にかかる場合があるのだなあと少し驚いて、色々参考になりました。
絶食療法中に直っているので、もしかしたら心因が原因だったのではなく、絶食療法による身体的変化で治ったのでは? という疑問も残ったりはします。(それでもゆっくり休んだ事による心の変化も大きいのだろうけれど)
腰痛持ちの人は参考になる本だと思います。