「平安の衣」(オー・ヘンリー)

洒落者で有名な社交界の伊達男が突然失踪し、スイスの山中の僧院で見つかった。
仲間が一緒に帰ろうと言っても、穏やかに拒否をする。
何故彼は突然失踪し、出家したのか? という心理ミステリ的な話です。
それはもう、何か感動的な心境の変化があったのだろうと、その時の私の心の中は「ビルマの竪琴」の映像が浮かんでいました。
が、しかしその僧侶となった男が言った言葉は……


ようやくぼくは膝のところが丸い袋にならぬズボンを見つけ出したわけだよ。やっとぼくは……」
――――は?


1秒後に、爆笑。もう爆笑。大笑いだ。すごいよ、オー・ヘンリー。いやー、これはジョーク集にあってもおかしくないぐらいだ。もう気に入ったのなんの。
"オー・ヘンリー"という名前からして先入観を持ってたんだよね。感動的な理由だろうと。
なのになのに、ズボンの膝がポコンとならない服をみつけた(確かに僧衣はそうだよな・・)からだって。

いや、もう本当完全にしてやられたよ!私の中で、10指に入る短編となった。
最後の一葉」もそうなんだけど、最後にひっくりかえるという、ミステリっぽいところもとても気に入りました。
おすすめです◎
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